2013年10月3日木曜日

変わらないことの必要性『Lightning Vol.235 2013年11月号』

Lightning (ライトニング) 2013年 11月号 [雑誌]
Lightning (ライトニング) 2013年 11月号 [雑誌]

ライフスタイル誌『Lightning』の最新号はファッション特集だ。巻頭から延々と僕の大好きなアメリカンカジュアルのグラビアが続く。フルカラーで。もう眺めているだけで幸せな気持ちになれる。が、ページを覗き込んできた妻は言う。「男性モノって昔から変わらないね…」。まあ確かに…

でも『Lightning』はもともとそういう雑誌ではある。過去の表紙を見ても『一生モノのレザープロダクツを探せ!(2008年1月号)』『時代が変わっても大切にしたいモノがある。(2008年7月号)』『ずっと愛せる服を着る(2008年11月号)』『長く使える男の道具(2010年3月号)』『ずっと使い続けてこそ意味がある(2010年7月号)』『醍醐味は経年変化にある。(2010年12月号)』、ようはいかに魅力的な”一生モノ”に出会い、(メンテすら楽しみながら)長く使い、経年変化を愛でることを最高の愉しみとする男たちに向けて作られているのだから。

改めてグラビアを見てみれば、ライダース、フライトジャケット、カバーオール、スウェット、デニムにレザープロダクトと昔と変わらないブランドの昔と変わってなさそうなアイテムが並ぶ。ただひたすらにモノにクローズアップされてる。モデルもほとんど登場しないし、女性とキャッキャウフフしてるカットがないので男性誌によくある”モテ”のイメージを想起するシーンもない。モテるために着るのではないのだ!、という安心感(?)がそこにはある。好きな人にとっては今号は最高に楽しい1冊に違いない。きっとニヤニヤしながら眺めることができると思う。 

流行を追うのではなく、昔から変わらないモノを愛でる、というのはファッションではなかなか女性からは理解しづらいかもしれない。でももしかするとこれからは”良いものを買って長く愛でる”への理解が広がるかも。もうすぐ消費税も上がるし。だから「いつもこの人同じ服買ってるなぁ」と思っていても、彼氏や旦那がこういう雑誌を眺めている間は暖かい目で見ていてもらえると嬉しい。きっと家計の助けにもなる…かもしれないので。

2013年9月19日木曜日

僕らのブラウザの中の延長線上にあるシリア内戦「WIRED VOL.9」

オープンガバメント特集という事で、先を行くアメリカとエストニアの事例、そして財政破綻をしたデトロイトで今起きている状況のレポートなど興味深い内容だった。

ただ東日本大震災以降に日本でも経産省などでも取り組まれていたと思うのだけど、最近ぱったり聞かなくなった感じもするので、そのあたりどうなっているのか、や、海外の先行事例を元に日本で今後どう取り組んでいくべきなのか、という話しもちょっと読みたかったなぁと思う。

やや物足りない特集ではあったけどこの号を買って良かったと思ったのは、巻末に掲載されていたシリア内戦のレポートが面白かったから。3週間に渡ってシリアのアレッポに滞在し反政府軍の武器製造について取材したという翻訳記事で、その内容が結構衝撃的だった。

武器や兵器の製造というと今どきは最新テクノロジが投入された世界を想像するが、取材先の状況は完全な家内制手工業。限られたツールと素材を使い、本業ではない人たち(元々はネットワーク管理者や塗装業者などの人たち!)が製造に携わり、最新設備を持った政府軍と対峙している。そして人殺しの道具を作っているのだという思いを持ちながらもなお、自分たちの行動が自国の未来を切り開くのだという信念で戦っている。

化学兵器使用の話題以上のことが伝わってこないシリア情勢は、日本では遠い国のこととして考えがちではあるけれど、このレポートの所々に挟まれる妙に身近なエピソードが決してそうではないと教えてくれる。

武器製造にネットの情報を駆使しているのは当然として、ゲーム『エイジ オブ エンパイア』からアイディアを得た兵器、マシンガンの操作にプレステのコントローラを使った装甲車、そして自家製手榴弾を飛ばすスリングショットを前にして「アングリーバードさ」という兵士。しかも飛ばした手榴弾は角度を誤って壁にあたり自分たちの方に戻ってきてしまうというゲームみたいなエピソードも…(実際に爆発してるので命がけなのだけど)

僕らが日ごろ覗き込んでるブラウザの中ともシリア内戦はそれほど遠くないところで繋がっている。WIREDのこの記事は国内ニュースなどでは知る事ができないシリア情勢の1側面を伝えてくれる良記事だった。こういうテーマはあまり他のメディアでは取り上げないと思うのでWIREDには頑張って欲しいなと思う。